へたくそなギター弾き

僕がギターを弾き始めたのは、まだ僕の心がきれいだった頃。
指も届かなかったけど、それでも楽しかった。


僕の父さんもギター弾きで、とても綺麗な音色を奏でる歌うたいだった。


僕が10歳の時、初めて父さんにギターをもらった。
今のは二代目でコレは、コレも父さんから貰ったんだ。
弾きすぎて、所々傷だらけになってるけど…。


僕が初めて弾き語りをしたのは、それからもう少し大きくなってからだったと思う。
初めは、父さんの後について弾き語りをしてる姿をただ見てるだけだった。


そしてその日から、僕は【へたくそなギター弾き】と呼ばれるようになったんだ。


父さんの弾き語りを見ていた客の一人が、僕に弾いて見せろと言ってきた。
弾き語りの息子なんだから、上手くて当然とでも思ってたんだろう。


無垢な僕は、張り裂けそうな鼓動を抑え、父さんにもらったギターを持ち、父さんとお客が期待の目を輝かせる中─


『すぅ…』


深く深呼吸をし曲を奏でた。
比較的コードが簡単な曲を選び、弾いたつもりだった。
ずっとその曲で練習してたのもあって、少しばかり自信もあった。