へたくそなギター弾き

その切り株は月明かりに照らされ、キラキラと光っていた。


『今日はここで弾こう…』


僕は気づかなかったんだ、自分が笑っていたことに…
 笑うことすらも忘れていたんだと言うことに。


ギターケースから、弾きなれた茶色いアコースティックギターを取り出すと、切り株に座りジャ~ン…と一掻きした。



『…ッ!!』


その時弾いた音色は、今まで聞いた中で一番きれいに聞こえた。
僕は一呼吸吐くと、ギターをつま弾いた。


D G A F#7

Bm7ohA G A

D G AF#7 Bm

Bm M7 Bm7 E7 G

A Bb C─…


月明かりが照らす中、切り株に座って永遠と曲を奏で続けた。
僕の大好きな曲。
街では一度も弾かなかったんだ。


いつか弾こうとコッソリ練習していた曲。
【口笛吹いて歩こう】も好きだけど、歌を奏でる僕はこの曲が大好きなんだ。


父さんにも聞かせればよかった…。
そろそろ僕の事を話すよ。