─ジャーン…


歌い終わった琉歌は、満足そうな顔で月を眺めていた。
ずっとそこで、僕達が奏でる歌を照らし続けている月。
父さんも聞いてるだろうか?


『琉歌』


俺は琉歌に背を向け、さっきの"聞きたいこと"を途切れ途切れ話した。
どうやら俺にもまだ人間らしい所が残っていたらしい。


「んー?」


『…ちょっと聞きたい事がある』


「なに?」


『…一緒に…歌わないか? 無理なら別にいいんだ…迷惑じゃなければ…』


こんなにも心臓が騒ぐなんて思わなかった。
俺はいつだって1人で歌ってた。
1人にはなれてる、なのに、何でこんなに怖いんだろう?


「りょうと一緒に?」


『うん。 ダメならいいんだ。』


琉歌の声にいちいち反応してしまう。
そして心の片隅で祈るんだ「いいよ」と言ってくれと…。



「断る理由、僕にはないから。」


『!……じゃあ…』


「いいよ?」


『ありがとう』


その言葉を言った瞬間、ドクンと心臓が跳ねた。
僕は人に感謝をする事まで忘れていたらしい。


「僕の方こそありがとう! これで、僕とりょうは友達だね。」


『…トモダチ…─おう!』