「僕が10歳の時 両親は事故で死んだんだ。
居眠り運転のトラックを避けきれず、そのまま…
僕は親戚に引き取られた。
その家に行ってから、僕は毎日歌わされた。
"お前は金のなる木みたいだ"って言われて…」
『俺は消えちまえって言われた事がある。』
「…りょうは強いね。」
『強くなんかない。
逃げてるだけだ。』
「りょうは強いよ…
僕なんか逃げる事もできない。」
『…俺達、どっか似てるのかもな。』
「うん。 …りょう」
『なに?』
「 もう一曲、弾いて欲しい曲があるんだけど…」
琉歌はチラチラ俺を見ながら、そう言った。
断られるとでも思ってるんだろう。
『弾ける範囲内なら…』
「今宵の月のように…弾ける?」
『弾き語りが仕事だから。 歌うのか?』
「うん。」
『そう。』
「りょうも歌ってよ?」
『……行くぞ。』
琉歌はさっきと同じように、息を深く吸い込み、ゆっくり吐き出した。
ただ一つだけさっきと違う所を見つけた。
(座りでも立ちでも大丈夫なんだな。)
ジャーンと鳴らしたのを合図に、琉歌が歌い始めた。