へたくそなギター弾き

【教わろうとするな、盗め!】それが口癖だった。」


それは僕が初めて聞く話ばかりだった。


「お前は俺によく似てる。」


『え…?』


「俺もなへたくそって言われながら、育ったんだ。
親父を追い抜くのは、大変だった。
どうしたら追い越せるんだろう?ってそればっかり考えてた。

それからしつこいくらい親父を観察した。
俺と親父の違う所を一生懸命探した。」


『その違いって俺にもある?』


話の途中、そう父さんに聞くと「ああ。 お前はまだそのことに気づいてないみたいだけど。」と言われた。


「自分で気づかなきゃ意味が無いから、この先は言えない」とも…


『そのことに気づいたから、今の父さんがあるってこと?』


「ああ、そうかもな。
りょう 人の言動に惑わされるな。
お前の悪い所は、すぐ心を閉ざして殻に閉じこもる所だ。
よく思い出してみれば、何が必要なのかわかるはずだ。」


『何が必要か?』


「大丈夫、お前なら答えを出すことができる!!
なんせお前は俺の自慢の息子だからな!」


そう言って父さんは笑った。
それが僕が見た最後の笑顔になった。
その3日後、父さんは息を引き取った。