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 しゃくり上げたり、すすり泣く声が聞こえなくなったと思ったら。

 俺の胸元に頭を預け、寝入る梨海の姿が目に入った。

 仕方なく、起こさないように梨海を抱き上げ、ソファーのある社長室に向かう。

 それにしても、身長の割に軽い。っていうか、軽すぎる。

「あ……泣かした」

 社長室に入った瞬間、開口一番にそう言ったカイは、じっとこちらを見続ける。

「俺が泣かしたんじゃないから」

「ウソツケ。もしかして無理やり――」

「してねぇよ。このエロオヤジ」

「エロオっ……。はあ。まったくヒドイよね耕太は。梨海ちゃんに愛想尽かされるよ」

 梨海をソファーに下ろし、スーツの上着を掛けてやる。

 こいつ……すらりとした体に出るところは出て引っ込むところは引っ込む、モデル体型。
 顔立ちなんか、はっきりとした目鼻に桜色のふっくらとしたこぶりの唇。

 有名な雑誌から飛び出して来たような女。

 その女の元カレは、そこら辺にうじゃうじゃいる平均に平均を加えた感じの男だった。