ラスト プリンス



 バス停に着くまでの間、耕太の手元を見れば両手に買い物袋。

「ねぇっ。一個貸してよ」

「はあ?なんでだよ」

 素直に『ありがとう』って言うような奴ではないと思ってたけど、なんでだよって……。

 こっちがなんでって言いたいわよ。

「袋二つあるじゃんっ」

「お前に渡したらどうなるか分かんねぇから、イヤダ」

 どうなるか分かんねぇって! あたし、何か壊しましたかっ。 なくしましたかっ。

「だってっ」

「うるせぇって言っ――」

「かっこ悪いじゃない! スーツ姿なのに、両手にビニール袋をぶら下げてるなんてっ! 確かに、荷物を持ってくれる男はかっこいいとは思うわよ? でもそれは、重い荷物だけでいいのっ。 全部なんて持ってもらったら、逆に申し訳ないわっ!」

 息を付く間もないくらい言葉を並べたあたしは、少しばかり息が上がっていた。けど、納得出来ないんだもの。

 男は優しいだけじゃつまらない。

 少し強引だったり、ワガママだったり。少し子供っぽさが残ってるから、その魅力に惹かれる。

 そう思うのはあたしだけかもしれないけど、性格だから仕方ないの。