ラスト プリンス



「……ねぇ、梨海ちゃん。なんだか、今日はお化粧薄いね?」

「えっ?まあ、ね……ほら、最近薄いほうがいいみたいだし」

「ナチュラルメイクって言うのかな?とっても、梨海ちゃんに似合ってて、可愛いっ」

「優衣に言われても、説得力ないわよ」

 なんで?と。
 これが、真顔で首を傾けるから質が悪い。容姿も性格も完璧で、“お姫様”って崇められてもおかしくないと思うけど。

 それをまったく鼻に掛ける(っていうか、自分の容姿がどれだけ良いのか気付いてないだけなんだけど)様子がない所が天然で可愛い……って。

 優衣を好きな男は皆、あたしの所に相談にくるのよね。

「あっ、そうそう。ねぇ、優衣、お願いがあるんだけど……いい?」

 優衣は咲いたばかりの花のように微笑み、「なあに?」と嬉しそうに目を輝かせた。

「あたし、どこに何があるのか分かんないの。だから、教えて?」

「うん。いいよっ」

 屈託のない笑顔に釣られ笑えば、優衣は「じゃあ、行こっか」と優しい声音でそう言った。