ラスト プリンス



「………梨海ちゃん?」

 やっと見つけたオレンジジュースを手に取った時、後ろからソプラノの優しく柔らかい声が聞こえた。

「えっ?……ああっ、優衣っ!」

 後ろを振り返れば、ふわふわとした胸元まである黒髪くせっ毛を、斜めで一つに結っている優衣が微笑んでいた。

「梨海ちゃんがお買い物なんて、珍しいね」

「まあね。 優衣は?彩織(さおり)さんと?」

 優衣のご両親はオーケストラに所属し特にヨーロッパなどを転々てしてるらしく、家を開ける日がほとんど。

 そのため、優衣を心配したお父さんが、家事手伝いとして彩織さんを雇った。

「うん、そうなの。彩織ちゃんとお買い物」

 ふんわり微笑む優衣は、背中に羽が生えてるんじゃないかって、疑いたくなるほどのエンジェルスマイル。

 背だって155センチだっけ?
 まったく。この子はどこまで女の子らしくて可愛いのっ。

 しかも、見た目だけじゃなくて中身もいいんだから、まいっちゃう。