ラスト プリンス



 だったら。

 好きな人と結婚出来ないなら、その分結婚する前に、大好きな人と過ごしたい。

 そんなことを、ウエディングドレスを見ながら考えていた。

「……結婚、お考えですか?」

 不意に聞こえてきた声に目を向ければ、そこには細身の男性が、あたしに柔らかく微笑む。

 男性は黒のスーツを着こんでいる。

 男性が立っている所は、ちょうどお店の入り口。

 ウエディングドレスより上、白く柔らかい光の看板には『ブライダルドレス BELL』の文字。

 ああ、そうか。

 この人は、ココのお店の定員なのね。

 それにしても、容姿からしてなかなかの男前じゃない?

 まあ、あたしのタイプとしては少しばかり線は細いけど……って、結婚指輪してる。

 なーんだ。

 目の前に立つ男性に、曖昧に返事をしながら微笑む。

「……カイ!何やってんだよ」

「ん?お客さんかなって」

 中から出てきたのは、先程の男性よりは身長が高く、黒縁眼鏡をしていて、彼もまたスーツ姿。