ラスト プリンス



 まだ完全に覚めていない体を動かしてバスから降りれば、スタスタと先に進む耕太。

「ちょっ……はやいって!」

「てめぇの足が短いだけだろ」

 分かってるなら気を遣いなさいよっ、とは言えない。

 だって、さっき買ったコーヒー豆が入った紙袋を持ってくれてるんだもの。

 べ、別に、耕太が勝手に持ってるだけよっ?

 だけど、ね? なんだか悪い気がするのは、気のせいかもしれないんだけど。

 せめて、置いていかれないように、と出た行動が悪かった。

「……なにやってんの」

 バスを降りる時から、何故か不機嫌だった耕太は、さらに機嫌が悪くなったみたいで。

 上からギロリと睨まれてしまった。

「ご、ごめんなさい……」

 さすがのあたしも、感じたことのないオーラに、ささっと耕太から離れた。

 ただ、耕太の腕に自分の腕を絡ませただけじゃない。

 スーパーはバス停から近く、すぐ着いたのは良かったんだけど。