ラスト プリンス



「コーヒー飴?マスターからもらったんですか?」

「うん。まあね」

 受け取る様子がないから、あたしはそれを軽く握って耕太のスーツのポケットに押し込んだ。

 だって、あたし食べられないんだもん。

 カフェオレなら飲めるような気がするけど、甘くたってミルクが入ってたって、コーヒーは無理。

「コーヒーが嫌いだからって、俺に押し付けないでくれます?」

 ポケットに押し込んだ飴を取り出す耕太を、今度はあたしがまじまじと見てしまう。

「……なんで知ってたの?」

 自分でも、ずいぶんと素っ頓狂な声だとは思うけど。

 言ったことも、聞かれたこともないのに、どうして知ってるのか不思議すぎるじゃない。

「まあ、出されたコーヒーを飲もうか飲まないか迷ってるなら、俺がって思ってやりましたけど。
コーヒー飴、二つもらったんでしょ?なのに、二つ俺に押し付けた。 コーヒー嫌いに繋がりますよ」

 やっぱり、2杯目を飲みたかっただけなんだ……。

 それにしても、優しいんだか優しくないんだか、分かんない。