ラスト プリンス



「気持ち悪いんで、考え事するなら前見てしてもらえません?」

 不意に聞こえてきた声に視線を上げれば、あたしから奪った2杯目のコーヒーを飲み終わった耕太が、目を細くしていた。

 こいつに聞くしかないのか、と考えながら、負けじとあたしも目を細くする。

「……カイさんって何歳?」

「三つ上」

 ってことは、24歳?!

「奥さんは?!」

「俺と同い年」

 奥さん21歳なのーっ?!

 それじゃあ、仕事をほっぽっても家に帰りたいよねぇ、うん。

 体を前に戻し、ひとつ、小さなため息をつく。

 ……よし。 諦めよう。 っていうか、踏み止まれ、梨海っ!

 カイさんは恋愛対象じゃなくて、親しき上司と部下になればいいじゃないっ。

 あわよくば、友人っていう線もないわけじゃないんだし。