「はい。今までと同じで。マスター、いつもの下さい」
「すぐ用意するね。……ちょっと時間かかっちゃうから、そこ座ってコーヒーでも」
「すみません。ありがとうございます。……ほら、梨海さんも」
カウンターの席に座り、隣のイスを後ろに引いてあたしを見る耕太。
「……あ、はい」
黙って耕太の隣に座って、出されたコーヒーを見つめる。
……どうしよう。あたし、コーヒー飲めない。
この前、耕太に口移しで飲まされたときは、量が少なかったから平気だったけど。
だからって、耕太に助けを求めるのはなぁ。
でも、サービスで出してくれたのに残すのも失礼だと思わない？
考えた結果、頑張って飲むことにしたあたしは、白いコーヒーカップに手を伸ばした。
「……お前はこっち」
隣で小さく呟いたのが聞こえたと思ったら、あたしのコーヒーカップが右に移動し、代わりに何も入ってないコーヒーカップが目の前に現れた。
「……耕太、さん？」
「よくできました」
よくできました、じゃなくてっ。
