ラスト プリンス



 吸い寄せられるように近づき、可愛らしく控えめな花柄があしらってある純白のドレスを見る。

「……きれぇ」

 そう呟いた言葉は、冷えてきた風に攫われた。

 あたしに、好きな人と結ばれる日なんて来るのだろうか。

 今日は11月25日。

 悲しくもクリスマス1ヶ月前に振られてしまった。

 2ヶ月後の1月25日の16歳の誕生日に、もしかしたらあたしは、結婚するかもしれない。

 それも、好きでも何ともない人と。

 相手は5歳年上らしく、親同士が仲良くて『将来、親戚になりたい』という願望のため。

 ホント、迷惑な話。

 お母さんが言うには、『梨海に好きな人がいるなら、無理にとは言わない』らしいけど。

 独り身になった今、どうすることもできない。

 それに、あたしの家は一応華道家で創流してから結構日が経つけれど、活躍しているジャンルが少なく低迷。

 あたしが次期家元になったとき、困らないように配慮してくれてるんだと思うけど。

 結婚、については迷惑な話。

 だけど、今まで好き勝手やらせてもらったんだし、お母さんの夢を叶えてあげたい。

 叶えてあげたいけど………。

 2ヶ月後には、好きでもない人と一緒に暮らして、肌を重ねて。

 ………何が、楽しいのかな。