ラスト プリンス



「なっ何してんのよっ」

「その減らず口、塞いであげましょうか?」

 こんな所でキスしたら目立つでしょうね、と口元に笑みを浮かべながらさらりと言ってのける。

 ギッと睨むものの、無駄な気がしてきて、一歩下がった。

「結構ですぅっ」

 どうせ耕太だって、あたしを構ってるだけなんだから。

 そう思って、あたしもふざけて言い返し、耕太を追い越した、のは良かったんだけど。

 ちょうどそこが、分かれ道になっていて。

 だからって、後ろ振り返って耕太に「どっち?」なんて聞けるような可愛い女じゃないっていうか……ただ、悔しいだけなんだけど。

「はあ……そこ、右」

 呆れながらも、後ろで呟くのが聞こえた。

 なんだ……優しい所もあるんじゃない。

 てっきり、後ろからブツブツと嫌味が聞こえてくる覚悟でいたから、あたしは右手を上げてピースサイン。

「サンキュっ」

 可愛げはないけど、言わないよりかはましでしょう?