ラスト プリンス



 優しくってかっこよくて、笑顔も素敵で。

 ほんっと、クリスマスの2ヶ月前に彼氏と別れるは、気になった人は既婚者なんて、つくづく運のない女ね、あたしって。

「恋した男が既婚者で不運だな」

「……うん。そうなんだよねぇ……って、はあ?!」

 ばっと振り返れば、茶封筒を揺らしている耕太の姿。

 耕太は相変わらず無表情で、あたしを見下ろし、ふっと鼻でせせら笑った。

「好き、じゃないっ!!」

 ギッと睨み上げるあたしを一瞬見た後、すっと視線を前に戻す。

 耕太はそのまま、あたしの弁解なんて無視して、テーブルに置いてあるマグカップを持ち上げ、口をつけた。

「強がってる暇があんなら、コーヒー、入れ直して」

「強がってないっ。 ……コーヒーさっき入れたじゃない!」

「冷めて酸味が強くなってんの、早く」

 そういえば、バイト中だったわね、と思い“仕方なく”耕太のマグカップを受け取り、コーヒーを入れ直す。

 あいつは人にものを頼む態度って知らないのかしら?

 何でもかんでも、上からものを言いやがって……絶対友達少ないわね。

「はい、どうぞっ」

 強い口調でマグカップを差し出し、それを受け取った耕太を睨む。

 何ていうの? とりあえず、ムカつくのよね、この男。