耕太はひとつ深呼吸をしてから。
「俺、純日本人じゃないんだ」
漠然とした内容に、ハーフかクォーターってことかな、と頭の隅で考える。
「父親がアジア系らしい」
確かに顔立ちがヨーロッパ系でもアメリカ系でもな――
「………“らしい”?」
自分のお父さん、だよね?なら、どうして“らしい”なんて言うのよ。
「アジア系としか教えてもらえてねえんだけど。俺が腹ん中にいるって分かってユキと父親は結婚しようとした。でも、父親の両親は日本をあまり良く思ってなかったんだ」
「………え?もしかして……」
「そう。そのもしかしてだよ。俺の父親はいそいそと自分の国に帰ってった」
ユキさんが耕太を身籠ってるって分かってたのに、帰ったの………?
「でな。高校ん時からずっとユキが好きだったヤツがいたんだよ。そいつがユキと俺を守るために、気持ちを伝えずに俺が10歳になるまで支えてきた」
「耕太が10歳の時まで?」
「俺が10歳の時、ユキはそいつ――藤野悟志(ふじのさとし)さんと結婚したんだ。その3年後、さくらとひなたが生まれた」
どことなく寂しそうな耕太は、不意に泣き出しそうな子供のようにはにかんだ。
そして、ゆっくりと耕太の胸へと吸い込まれる。

