ラスト プリンス


 その言い草はまるで。あたしがすでに誰かのものみたいな、そんな感じ。

「……どういうこと?」

「それをこれから話す。さっさと着替えてリビングに来い」

 相変わらずの命令口調の言葉を残し、寝室を出て行った。

 何なんだろう。話って。

 帯を解きながら考えてみるものの、今までで思い当たる節も何もない。

 確かに、耕太のこと何も知らなくて謎な男だとは思ってたけど。

 あたしが耕太のことで知ってるのは、名前、年齢、妹がいること、ストレートのコーヒー、くらい?

 大学行ってるって言ったって、どこの大学かも、何を勉強してるのかも知らないし。

 ああー、もしかして偽名とか?

 耕太ならありえないことはないよね。

 身動きが楽なスウェットに着替え終わったあたしは、脱ぎ捨てた着物を畳む。

 着物を畳み終え、ベッドの端にちょこんと座り深呼吸。地味に緊張してしまうのは、耕太があまりにも真剣な瞳をしてたから、だと思う。

 耕太は何かをあたしに打ち明けようと思ってるんだよねぇ?

 もし、あたしが自分の秘密を誰かに言うなら、それはきっと優衣か舞希、あるいは物凄く信頼してて、好きな人。

 あたしがそうであるように、耕太もそうだったら。

 ……期待、してもいい、よね……?