ラスト プリンス


「いいの? 俺なんかと……」

「………いいんです。決めたことだから。 それに私の片想いだし……」

 やることはやった。 だから、後悔なんてしない。

 もう決めたことだか――あれ?

 彼のスーツの右ポケットから、何か草みたいな、緑の植物的なものが顔を覗かせている。

 少し引っ張ってポケットから出してみれば、それは―――。

 一束の青い花。

 そういうことね。 だから、ドイツの伝説を知ってたってわけ。

「……ずるい」

 突然呟いたあたしの言葉に「は?」と不審がる声が降ってきた。

「私にばっかり喋らして、ずるい」

 彼から離れて、あたしより5、6センチ高い彼の顔を見上げる。

「意味が分かんないだけど――っ?!」

「ホント。好青年ぶっちゃって」

 ゆらゆらと揺れる一束の青い花を彼の目の前に高く上げ、見せびらかすあたしに、相当驚いたのか一瞬目を見開いた彼はため息ひとつ吐き出した。

 それを取ろうと、大きな手をゆっくり上げて、青い花に手を伸ばす。が、空振り。