社長室では結構ユルイ感じで過ごしてるけど、いざというときの集中力は、並大抵のものではない。
集中力だけじゃない。
社長としてデザイナーとして、その寛大な性格も素質や能力を認められている。
実際、カイの親父さんが手をつけたまま、成し遂げることが出来なかったプランの着手を始めてるんだし。
「ねぇ、耕太ー」
「なんだよ」
くっきりとした二重の瞳をすっと細めたカイのその表情に、あっ……、と口の中で小さく呟いた。
前に、香保里さんからカイの親父さんの話を聞いた時。
『本当にカイは主人にそっくり』
見て見て、と差し出されたのは20代の男女が八分咲きの桜の木の下で撮られた写真だった。
それは、照れ臭そうにはにかむ女性とカイによく似た男性が微笑んでいる写真。
聞けば、20代前半の香保里さんとカイの親父さんで。
今のカイの顔が、まさに、あの写真と同じだった。 ただ、それだけだけど、びっと背中に電気が走る。
「梨海ちゃん、いいのー?」
明るく、けれども、何故か重たい言葉が床を這うように耳に入った。

