鏡で自分の姿を見て驚いているあたしを見て、穏やかに目を細めて笑う耕太。

 壊れ物を扱うように、あたしの髪の毛に触れ綺麗に整える。

 やばい。

 さっきの笑顔、好きかも。

「うたた寝している人の髪の毛セットしたの初めてですよ。
ヘアアイロン、顔にくっつけてやろうかと思いましたけど、思いとどまりました」

 やっぱ、嫌いっ!

 そんな酷いことを笑顔で言ってのけちゃう精神が理解できないわよっ。

 鏡に映る耕太を睨む。

 なのに、涼しい顔して澄ましやがってっ。

「ムカつくけど、ありがとう」

「お礼、言えるんですね」

「あんたねぇっ……」

「ふっ。可愛い顔が台無しですよ?」

 ひしひしと怒りが込み上げるあたしと対照的に、くつくつと笑う耕太。

 それも、さっきまで見せなかったような子供っぽい笑顔。

 そんな耕太を見て、「どれが素なの?」と聞いてしまったあたしは、まだまだ子供だと思う。

 だって、なんとなく分かるじゃない。