ラスト プリンス



「ああ。 別に誰が選んだって、プレゼントがあればいいだろ」

「誰がって……。耕太だから嬉しいんじゃない?」

 どうなんだか、と吐き出すようにそう言った耕太は、タバコに手を伸ばしてから、届く前に手を引っ込めた。

「タバコ。吸っても平気よ? あたし、喘息とか気管支系は大丈夫だから」

 気管支系は大丈夫って言ったってどこが悪いとかはないから、と窓の外の流れる景色を見ながら呟く。

 少し前に。カイさんが、『人はやれば出来るもんだな』と呟いたのを拾ったあたしは、気になって詳しく聞いたら。

 カイさんが耕太に『梨海ちゃんがいるところでは禁煙ね』って言ったらしくて。

 カイさんは、無理かな、って思ってたんだけど、案外あたしがいるときにはタバコ吸わないから、『人はやれば出来る』らしい。

「いや、いい……」

 人がせっかく、許可してんのに吸わないってどうなの?と、言い掛けたけど、カイさんとの話を思い出して止めた。

 もう一度、花束に目を遣る。

 最近、なんだか親しみのある色とりどりのガーベラを中心に、かすみ草やらで大きくなった花束。

 ……やっぱり、ユキさんが彼女かな?