ラスト プリンス



 同じクラスの井上くんは、その温厚な性格と紳士的な態度で学級委員長で。

 もしかしたら、そこら辺の女の子よりも可愛いんじゃないかなってほどの好青年。
 なんだけど、男女関係なくどこか一線を引いていて、あたしにとってあまり得意ではない、人かな?

 だからって、仲良くないとかそういうわけじゃないのよね。

「アルバイト?」

「ううん。ここ、僕の家なんだ」

「えっ、そうだったの?」

 その爽やかな笑顔で、なんともないように言われちゃったら、驚くことしか出来ないんだけど。

「まあ、ゆっくりしてって」

 にこやかに、そして、ご丁寧に耕太に軽く会釈までして、お店の奥に姿を消した。

「……なんだ、あいつ」

「クラスメイト。井上くんっていうの」

 「いけ好かないな」と、ぼそりと呟いた耕太。

 「あたしも苦手」と、あたしもぼそりと呟いた。

 それから、井上くんのお母さんがお店の奥から出てきて、あたしのチョイスで大きな花束をつくってもらった。

「良かったの?あたしが選んで」

 帰りの車内。隣の席を陣取るほどの花束をちらりと見てから、バックミラーに視線をやる。