ラスト プリンス



「うっせんだよ!黙れ!」

 それに対して耕太が大声で怒鳴るため、体がびくりと震えた。

「………こう、た?」

 カイさんに怒鳴ったって分かってはいるけど、やっぱり少し怖いのかもしれない。

 無意識に声が震えてる。

「……ああ、悪い。起こした」

「ううん、平気。少し前に起きてたから」

 ポンポンとあたしの頭を弾む大きな手のひらに、胸が苦しくなる。

 ん、と差し出されたそれは5枚目のブランケット。

 ………この車になんで少なくても5枚のブランケットが常備されてんのよ。

「分かったから。言わなかったのは俺が悪かった、はいはい。 じゃあな」

 まじうるせぇ、と携帯を乱暴に閉じると、紙パックのリンゴジュースを渡された。

 なんだか意外すぎて、じっと紙パックジュースを見つめる。

「果汁100%」

 受け取らなかったあたしに対して、耕太は小さく呟いた。

「いや、そうじゃなくて……意外?」

「は? 飲まないなら、俺が飲む」

「もらうもらう! っていうか、ちょうだいっ」

 最初からそう言えばいいんだよ、と少し不満そうな声と顔であたしに紙パックジュースを差し出した。