ラスト プリンス



 右肩が少し痛くて、それを直そうと体を動かしたとき、ブランケットが3枚になっていることに気が付いた。

「起きたか?」

 あたしが身動ぎしたのに気付いたのか、優しい口調でそう聞く耕太にあたしは口を開かない。

 運転席の後ろの座席ってバックミラーからでも見えにくいと思うの。

 だから、ウソ、ついてみたんだけど。

 もう一回、寝ようにも寝れなくて、やっぱり起きるか、と思ったとき。 耕太の携帯電話が鳴った。

「なんだよ」

 車の揺れがなくなった……多分どこかに車を止めた後、ぶっきらぼうな声が車内に響いた。

「……今? ちょうど花屋の前。 は? なにが。 ケーキ? ああ、はいはい。苺とチョコと……あ? 今、寝てる。別に……分かったよ、るせぇな」

 い、苺だって!!
 あの耕太が苺とかチョコとかケーキとかっ!

 思わず吹き出しそうになるのを必死に堪えていると、もう一枚ブランケットがかけられた。

『バーカ、バーカ、バーカ!』

 携帯電話から漏れる声はカイさんで、その声は少し怒ってるともとれる。