ラスト プリンス



 振り返らずに、後のことも考えずに、真っ直ぐ、あたしが思う方向に走っていたい。

 いいじゃない!
 あたし、まだ、15歳よ?

 本当は、26歳くらいまで好きなことやって、それから好きな人と結婚したいなって考えてたのに。

 あっけなく、それが崩れた。

 なら、最後の悪あがきをするだけのことよ。

 あたしは、目一杯楽しむって決めたんだから、それに沿って歩んでいけばいい。

 車外の外気により窓が曇る。

 別にかけたままじゃなくて良かったのに、と、口の中で呟いてエンジンに耳を傾ける。

 程よい温かさに自然と瞼が落ちるけど、それに対抗しようとも思わない。

 多分、人間(ひと)はこのくらいの温かさに包まれて眠りに落ちるのが一番いいんじゃないのかな?

 なんて。思ってしまうくらいの心地よさに、身を委ねた。


 どのくらい寝たのは分からないけど、体が揺れで目が覚めた。

 薄らと目を開けて辺りを見渡せば、眠る前と変わらない耕太の車内。