ラスト プリンス



 ……あれ?
 そういえば、あたしと結婚する予定の人も確か、5歳上だったわよねぇ?

 耕太は耕太であって、その人はその人なんだから、こんな感じじゃないよね……っていうか、こんな感じじゃ困るわっ。

 だいたい、21歳なんて遊び盛りなんじゃないのかなぁ。

 なのに、結婚しようとか思う?普通。

 今の時代、結婚して縛られたくないとか、自由でいたいとか、思う男の人の方が多いはずだけど。

 もしかして、あたしの相手は早く結婚したいとか思ってるとか? ……夢見る女の子じゃあるまいし。

 色々考えを巡らせてみたけれど、結婚する当の本人達にメリットなんてひとつもなくて。

 メリットがあるのは、双方の両親、はたまた、あたしの両親だけ。

 だとすれば、あたしの気持ちなんて関係なしに結婚させる気、よね……。

 あたしに好きな人がいようと、付き合ってる人がいようとも。

「………おい」

 すっとのびてきた男らしい手は、あたしの頭から頬へと滑った。

「車酔い、か?」

 ゆっくりと視線を上げると、運転席から後ろへ身を乗り出した耕太の顔。

 心配なんて全然してないくせに、簡単にそういう顔してあたしを騙すのよね……。

 騙されてるって分かってるけど、その、あたしの頬を包む手を払い除けられない。

 分かってるのに………っ。