ラスト プリンス



「花束は? アクセサリーとか服とか分かんねぇし」

「良いと思うよ」

 なおも続く話し声を背中で聞きながら、ドアノブを回して引く。

「行ってきま――」

「俺も行く。 車で行くから下行ってろ」

 バスで行くより、やっぱり車で行ったほうが楽。でも、なんとなく一緒にいたくない。

 だから、あたしはそこから動けなくて、唇を噛み締めた。

「何やってんだよ」

「あたし、バスで行ける」

「俺が買い物したいんだよ」

 ほら、行くぞ、と、あたしの手首を痛いほどに掴み、強引にお店を出て車に、後部座席にあたしを乗せる。

「誘拐!」

「俺はお前を騙してない」

「拉致!」

「むりに連れてきてない」

「むりに連れてきてるわよっ!」

「手足縛られてない。意識飛ばしてない。なら拉致じゃない」

 ………は?

「それはあんたの思い込みでしょ?! 世間では手首掴まれて引きずるように車までやってきて、車内に放り込むことを拉致って言うのよっ!!」

「十人十色、だ」

「そこで使うなぁあっ!」

 何なのよ。
 耕太ってホントにあたしより5歳も上なの?