「帰ってくる……まさかのまさかだ。 しかも、特典付きだ。聞きたいか?」
「ちょっと耕太うるさい。 なに?梨海ちゃん?」
「あっ、いや……別に大したことじゃないんで。 なんでもないです」
本人目の前にしてさすがに聞けないよねぇ……。
あたしは、両手を顔の前でブンブンと振り、出来る限りの笑顔を向けた。
カイさんは納得してくれたみたいだけど、耕太はなんだか鋭い眼差しを投げてくる。
それを笑顔で跳ね返したあたしは、「買い物行ってきます」とペコッと頭を下げて踵を返した。
棚や冷蔵庫の中身を確認して、必要なものをメモに書く。
「そういえば、ユキさんの誕生日近いんだよね?」
メモをポケットにしまい振り返ったあたしに聞こえてきたカイさんの声。
「今日だ」
それに答える耕太の声はいつも通りの抑揚のない声。
「誕生日プレゼント。何にするの?」
買い物に行かなくちゃいけないんだけど、どうしてもその会話が気になって脚が動かない。
ユキさんってどんな女(ひと)?
耕太の彼女?
胸がパンパンになってはち切れそうなほど、聞きたいことが膨れ上がって。
それを吐き出してしまわないうちに、踵を返してドアに向かった。

