ラスト プリンス



 いつのまにか耕太の声しか聞こえなくなってはいたけど、どうしても、胸が締め付けられてしまう。

 ……もうっ。
 好きじゃない、好きじゃない、好きじゃないっ!!

 気にもならないんだからっ。

 そ、そうよ。 ほら! もし、彼女がいるなら、今すぐこの賭けなんてやめるべきなのよっ。

 だから、別に、負けそうだからとかそんなんじゃなくて!

 いやいや。 負けそうなわけないし? むしろ、圧勝しちゃうし?

 …………何やってんのよ、あたし。

 これじゃ、ただのバカよ。 馬鹿。

 いまだに電話を切れないでいる耕太を一瞥。若干、心臓が泣いたけどそんなの無視して、カイさんに近寄った。

「……カイさぁ〜ん」

「んー? あ、ブーケ、ありがとう」

「いいえっ。気にしないで下さい。 あたし、少しなら花について詳しいんです」

 そうだったんだ、とミルクティーみたいな甘さを優しさで包み込んだ笑顔を向ける。

 どうしても、どうしても知りたいの。

「ねぇ、カイさん……耕太ってか――」

「おいっ、カイ!」

 彼女いるの?と聞こうとしたあたしの言葉を遮ったのはもちろん耕太で。