ラスト プリンス



 だって、あたしったら昨日みたいに涙で顔ぐちゃぐちゃなんだから。

 でも。
 悔しいんだもん。
 ムカつくだもん。

「ねぇっ……何でよ! 耕太が嫌われる必要なんてないじゃないっ」

 泣いている勢いの所為にして、耕太の胸の辺りを何度も何度も叩く。

「……はあ。 誰に嫌われようと、仕事が出来る環境があればいい」

「そんなっ……」

「何なんだ、お前は。 ここじゃ、カイの邪魔になる。隣の部屋行ってろ」

 ぽんぽんとあたしの頭を撫でた耕太は、カイさんのマグカップをあたしから取り上げた。

 悔しさやら怒りやらで落ち着けないあたしは、「ごめんなさい」とカイさんに向かって小さく頭を下げる。

 唇を必死に噛み締めて、涙を堪えようとするけど、役に立たなくて。

 ボロボロと涙で顔を汚しながら、社長室を出て隣の部屋へと移った。