ラスト プリンス



 ………でも。
 耕太が嫌われる理由なんてどこもなかったのよ?

 コーヒー入れますね、とカイさんのマグカップを持ち上げ、それに視線を落とす。

 だとしても、何でそれを否定せずにそのままでいるのよ。
 否定すればいい話じゃないっ。

 何よ、サドだと思ってたけど、もしかしてマゾだったとかいう変なオチ?

 ……まさか。
 それは絶対ありえないわ……っ?!

 いきなり視界が真っ暗になり、ボフッと何かにぶつかった。

「どこ見てあるってんだよ、バーカ」

 頭上から聞こえるのは、抑揚のない耕太の声。

 耕太にぶつかったんだと思いつつ、その反動であたしが後ろに倒れないよう、抱き留めてくれていて。

 ぶわっと目頭が熱くなったあたしは、ぎゅっと耕太のスーツを掴んだ。

「ばっ……しわになるだろ、離せよ」

 なんて言ってるくせに、引き剥がそうなんて気がまったく感じられない。

「梨海ちゃん、どうしたの?」

「知らねぇよ。 子猿のくせに盛ってんじゃねぇの?」

「なっ?! 違うわよっ!」

 弾みで顔を上げて後悔した。