ラスト プリンス


 鏡の前にも結構高そうな化粧品が綺麗に整理され置いてある。

 藤野耕太は丁寧に、ぐちゃぐちゃになったあたしの化粧を落としていく。

 その手つきは慣れもあると思うけど、優しくそして無駄な動きがない。

「どうですか?自分のすっぴんは。ひどいですね」

「そんなに変わらないけどっ」

「そうですかね。結構、変わってると思いますけど」

 しっ失礼なヤツだなっ。

 確かに、あたしはどっちかにしろとは言ったけど、敬語バージョンだと嫌味が!

 藤野耕太は手際よく、大きめのパウダーブラシでファンデーションをのせていく。

 しかも、ちゃんと塗れてるのか心配になるくらいの力の入れ加減で。

 それにしても、男性がメイクアップする姿とか真剣な表情って、なんだかかっこいい。

 鏡越しに見る藤野耕太にうっかり見惚れていたのが悪かったのかもしれない。

 あたしの視線に気付いた藤野耕太は、鏡を通してあたしに笑いかけた。

 うっ………。

 目が笑ってないのバレバレなんですけど。

 なのに、心臓が疼いちゃってるあたしってかなりの重症よね。