「でも、藤野さんは嫌い、何ですよね?」
カイさんよりは性格捻くれてるし、自己中で何様俺様タイプだけど、どうしても納得出来ない。
「まあね。仕事も早くて、社長に信頼されて右腕っていうのは納得出来るけど、さすがに傲慢すぎる。そのクビの件だって、その場で『明日から来なくていいですから』よ? 社長に聞かないの?! みたいな」
………耕太らしいって言っちゃってもいいのかしら、これは。
だって、カイさんに聞いたってどうせ『耕太に任せる』って言いそうだし。
っていうか、人事については耕太が担当してる可能性だってあるじゃない。
「でも、容姿はいいよねぇ。もったいないくらいに。あれは、目の保養よ、うん」
うんうん、と頷いている遠藤さんはふと固定電話に視線を落とした。
途端。トゥルルルルッと小さくそれでも存在感のある音が響いた。
「はい、ブライダルドレス BELLです」
何ともなかったように、応対する遠藤さんは手際よく何かをメモを取っている。
……え? え? 遠藤さんって予知能力者?!
唖然として遠藤さんを見ていれば、その視線に気が付いたのか顔を上げて口元に微笑みを浮かべた。
そして、何やら一枚のメモを差し出しヒラヒラさせる。
メモを受け取り綺麗な字を目で追えば、[お客様から電話がくるのがなんとなく分かるの。さっきはたまたま当たっただけ。私、ちゃんとした人間だから☆]と。
………へ、へぇー。

