「うん。七瀬さんが来てからまだ一回も起きてないから知らないと思うけどね? ふわふわ系の社長に、ガチガチ系の藤野さん。 社長は人気があるんだけどね。 藤野さんって、無表情で抑揚のない声で結構キツいこと言うじゃない。それで、今までに何十人かココの店員切ってるの。しかも、独断で」
まあ、なんとなくだけど耕太が店員さんたちから嫌われてるのは分かった。
確かに、敬語バージョンの耕太ってあたしも苦手だけど、遠藤さんたちとは種類が違うと思うの。
だって嫌いじゃないもの。耕太のこと。
敬語で無表情でたまにキツいこと言われても、それはあたしの失敗とかで、そういう風に言われるのは仕方ないことだから。
でも、耕太の独断って決め付けるのもどうかと思うのよね。
ちゃんとカイさんに相談したかもしれないし。
「……辞めようとは思わないんですか?」
なんだか悔しくて、怒りを押さえながら、隠しながら口を開いた。
「うーん。人数少なくて仕事は大変だけど、それに見合ったお給料は貰ってるし、何より楽しいから」
にこりと笑った遠藤さんがこの仕事が好きなことは、分かった。 分かったけど………。

