「ごちそうさまでした」
彩織さん特製トマトスパゲッティを平らげたあたしと優衣は、買い物に行くことにした。
買い物って言っても、ほとんどウィンドウショッピングなんだけど、結構楽しくてよく優衣とするの。
しばらくウィンドウショッピングを楽しんだあたしは優衣に断りを入れ、BELLへ向かう。
冷たい風が頬を撫で赤みを帯びていく中、縋るようにBELLの店内に入った。
「いらっしゃいま……七瀬さん、こんにちは。具合の方はどう?」
かすかに口元に笑みを浮かべる遠藤さんは、心配そうな声音でそう聞いてきた。
あ……具合が悪かったってことになってたんだっけ?
「こんにちは。大分よくなりました」
それは良かった、と瞳を弧のようにして安心した表情の遠藤さんに、ご心配おかけしました、と頭を下げた。
「もう、びっくりしたんだから。 あの無表情で冷酷な藤野さんが慌ててココ出ていって、そしたら、七瀬さんお姫様抱っこして帰ってきたんだもの。 っていうか、最近かなり穏やかっていうのも怖い」
『無表情で冷酷な藤野さん』ねぇ……。
そりゃあ、あたしも思うけど、子供みたいに笑う時も、ホントに時々あるんだよねぇ……ん?
「………怖い?」
最後に付けた『最近かなり穏やかっていうのも怖い』の言葉の意味が分からなくて、一部を反芻した。

