ラスト プリンス



「彩織さんの誕生日、知らなくてごめんなさい。来年からはちゃんとお祝いしますね」

「いいのいいの! こうやって、時々貰った花束をプロさながらのフラワーアレンジメントしてもらえるだけで十分。 ホントにありがとう」

 嬉しそうに受け取ってもらえるだけで、あたしは嬉しくて自然と笑みが零れる。

 ああ。やっぱり、あたしは“華”が好きなんだな。

 好きな音楽や庭のししおどしの音に、無音のあの空間でぱちんぱちんと草花を切り取って花器に挿すのがたまらなく好き。

 小さい頃から、両親は忙しくほんの少しだけ寂しい気持ちもあったけど、この時だけ、寂しさを忘れられた。

 優衣だって、10歳からほとんど親に会ってなくて、寂しくて、ホントに自分は両親に愛されてるのか、不安で。

 舞希もあることで一時期の記憶が欠落していて、家族に心配をかけてしまったことから、人の前で泣かなくなった。

 そんな幼なじみ三人だからこそ、お互いを理解し合えて、甘えられる。