『卵割ってね?』と言われた優衣は、中身を出すボウルに卵を叩きつけたらしいの。
まあ、他にも調理実習とかで色々(ご丁寧にきゅうりの皮剥いたり、ジャガイモを洗剤で洗ったり。他にも調味料をぶちまけたっていうのもあったわね)やったけど、ここまで料理音痴っていうのも珍しい。
「ないですけど、まだ、優衣よりかは使えるかと」
学校の調理実習の時、まあまあできたから、腕もそこそこなんじゃない?
「うん、いいよ。 あっ!その前に花を花瓶にいい感じにやってもらえる?自分でやると、ぐちゃぐちゃになちゃうんだよね」
片手で持てるくらいの花束を持ってきた彩織さんは、「お願いできる?」と優しい声音で言う。
このくらいなら短時間でできます、と花束を受け取った。
花束は、タンポポのような花形をした、赤、ピンク、オレンジ、白とカラフルなガーベラの花束。
確か、ガーベラって12月の誕生日花よね?
優衣は誕生日4月だし、ってことは彩織さんが最近誕生日だったのかしら。
「優衣ー、入るわよぉ」
ぴたりと鳴り止んだピアノの音の余韻が残る中、「はーい」と返事が聞こえた。

