「おはようございます」
リビングに入り、キッチンにいる彩織さんに声をかける。
「ぐっすり眠れたみたいで良かった。 お昼、優衣ちゃんと一緒でもいい?トマトスパゲッティなんだけど」
「はい。すみません、ホントに。ありがとうございます」
いいのいいの、と手をひらひらさせる彩織さんはにっと笑い、再び料理に取り掛かった。
料理、ねぇ。 一応結婚する予定だし、料理くらいできた方がいいのかな?
うーん。もし、この先お手伝いさんすら雇えなくなった時、あたしが作るのよね?
「彩織さんっ。あたしに料理教えてください!」
だったら、今から練習しなくちゃじゃないっ。
家だときっと栗橋さんが邪魔するだろうし、どこかの料理教室に通えばバレるだろうし。
でも、彩織さんなら絶対バレないわっ!
「料理の経験は? あ、ほら。ここの家には、このキッチンを関ケ原の合戦ごとく荒らすヤツがいるから」
そういえば、昔(昔って言ったって、小学6年生くらい)。
料理を手伝いたいって喚いた優衣に、卵なら割れるだろうと思った彩織さんはそれを頼んだ。
彩織さんは優衣が小学4年生のころから、住み込みで家事手伝いをしてるんだけど、さすがに驚いたって。

