ラスト プリンス



「先輩と別れてから、梨海ちゃんは誰とも付き合ってないもん。 それは、藤野さんのおかげみたいだもんね」

「は? なんで、耕太のおかげなの? 冗談じゃないわ」

「だって、今、先輩……ううん。誰かと付き合ってた頃より、楽しそうだもの」

 確かに、楽しそうかもしれないけど、それは別に耕太のおかげではないわっ。

 それに、どっちかって言ったら第二の癒しのカイさんだと思んだけど。

 もちろん、第一の癒しは優衣よ。

「バイト、は。楽しいわ。 でも、それは耕太のおかげなんかじゃ……」

 ない。とは言いきれなかった。

 あの日、あたしが真司を振って、いつもとは違う道を通って、無駄に耕太にときめいたから悔しくて。

 だから、賭けを申し込んだ。

 ひとつでも欠けたら、たぶん……絶対、賭けなんて申し込まなかったと思うの。

 って考えてしまえば、耕太のおかげになっちゃうかもしれない……悔しいけどっ。

「ああっ、もうっ。優衣のバカ!」

「ええっ?! ば、バカって! そりゃあ、バカだけどそんなにはっきり言わなくても……」

 そういう意味じゃないんだけど!