ラスト プリンス



 ぞくぞくと都築先輩の彼女(学年とかもうバラバラだったわ)と名乗る人が現れたときは、もう驚いたってもんじゃなかったわ。

 見事無惨にも、あたしの初恋は散弾銃に撃たれた花のように見事に散ったの。

 それからというもの、なんとなく【イケメン=浮気性】という偏見があたしの中に埋め込まれた。

「そうなの?じゃあ、梨海ちゃん苦手なんじゃない?」

「それがねぇ………」

 口籠もるあたしに、優衣はオレンジジュースと一緒に持ってきたクッキーを差し出した。

「好き、なの?」

「ううん。そうじゃないのよ。 いつもなら、ビッと嫌悪感が走るのに。耕太は違うような……あ、でも、好きとかじゃなくて……。ただ……嫌いじゃない」

 耕太だけじゃなくて、カイさんもそうなんだけど、なんでだろう。

 カイさんならまだ分かるの。嫌悪感がないのは、あたしの中でかっこいいより可愛いが勝ってるから。

「じゃあ、その人のおかげだね。梨海ちゃんが変わったのは」

 そう目を細め優しい笑顔で言った優衣は、さらりと慣れた手つきで柔らかそうな髪の毛を耳にかけた。

「え? 変わった? あたしが?」

 驚いて眉を寄せるあたしをちらりと見てから、コップにオレンジジュースを注ぐ。

 優衣ちゃーん? どうしたのかなぁ?