「うっかりよ。うっかりー」
手のひらをひらひらさせながら、テーブルにある飲みかけのオレンジジュースを口に含む。
「どこでバイトしてるの? 行って良い?」
キラキラした目でそんなこと言われても、ブライダルドレスを扱ってるお店なんだから、来たくても来れないでしょ。
「そうね……優衣に彼氏が出来たら教えてあげる」
その気になったら彼氏くらい出来るんだから、と付け足しながら優衣を突いた。
「もぉう、梨海ちゃんたらヒドイんだから」
クスクス笑いながら、あたしの肩を軽く叩く優衣の髪の毛は乾き切っていてふわふわ揺れる。
「あははっ。 ブライダルドレスのレンタルや販売をしてるBELLってお店」
鞄から飴を取り出して口の中に放り込む。じわっと甘さが広がり口の中がぎゅっとする。
「………知らない。 えっ、じゃあ、藤野さんはどこの人?」
「社長の右腕だと思う。 秘書、とはちょっと違うような……うーん」
優衣に飴を渡しながら、耕太のことを考えてみるけど、やっぱり秘書っていうより右腕って感じが強いのよね。
ひとつ間違えれば、社長のカイさんを扱き使おうとするし……っていうか使ってるし。

