ラスト プリンス



 話す気がなかったわけじゃない。けど、なんとなく話しずらかったのも確か。 それでも、話す気になったのは、優衣だから、なのか。

「………真司に会ったんだ」

「えっ……なんで……」

「ボロクソ言われちゃってさ。 それに、あたし、二股かけられてたのよ。 ありえない」

 夕方起きたことを思い出して話してみても、悲しいはずなのに、全然涙が零れない。

「梨海ちゃん……大丈夫?」

 優衣の心配そうな声が聞こえてくるけれど、まったくそれが心に入ってこない……っていうか、入ってたとしても、たぶん泣かないと思う。

 それより、もっとひきずると思ってたから………あっ!!

「やられたっ」

 何よ。 これが目的だったわけ?! 分かりにくいにもほどがあるわっ。

 跳ね上がるように立ち上がったあたしを驚いて見上げる優衣になんてお構い無しに、コップをテーブルに置き、優衣の両肩を掴んで揺さ振った。

「りっりっりっりっ?!」

 慌てコップをテーブルに置く優衣は、あたしのパジャマの裾を握る。

「あんにゃろ……わざと言ったのねっ」

 あたしがしゃべるのもままならないから、ああいう風に真司をけちょんけちょんに言ったんだと思ってたけど。