ラスト プリンス



「梨海ちゃんのお布団は下でしょっ」

 優衣の言う“お布団”はダブル(いつか舞希も一緒にお泊まり出来るといいねって二人で買ったの。もちろん、あたしの家にもあるわ)の布団セット。

「ハイハイ。分かってますよぉ」

 のっそりと起き上がり、ベッドの端に座るあたしを見た優衣は、コップを渡してくれる。

 なんでか分からないけど、優衣んちのオレンジジュースは美味しいんだよねぇ。市販じゃないのかな?

「ねぇ、梨海ちゃん。何でそんなに目が赤いの?」

 唐突に。両手でコップを握る優衣は、あたしの隣にちょこんと座り、あたしの顔を覗き込む。

 心配の色をたっぷりと滲ませたその瞳は、ゆらゆらと揺れていて、逆にあたしが困ってしまう。

「泣いたからに決まってるじゃない」

「そういうことを聞いてるんじゃなくて……もうっ。梨海ちゃんったら」

 ふんわりと笑う優衣は、なんで彼氏がいないのか不思議なくらい、可愛い。

 これでピアノが弾けるって、どうなのよ? 才色兼備にもほどがあるわよね。