ラスト プリンス



「だるいなら寝ろ。 友達んち着いたら起こしてやるから」

「優衣の家知らないじゃない」

「だいたいの方向は分かるんだよ。 少しでもいいから寝ろ」

 バックミラー越しに、こっちを見てるのが分かるけど、どうしても、それを見ることが出来ない。

 何でかな、って思ったとき、思いついたのが、耕太が“優しすぎる”から。

 いつもなら、あたしのことなんて気に掛けないくせに、調子狂うわよ。

 頭を窓に預け、流れる景色を眺めていれば、車内に広がる耕太の香りと車の揺れに、あたしは瞼を閉じていた。


 ◇◇◇


 ばふっと優衣のベッドに倒れこんだあたしは、体をひねり仰向けになった。

 彩織さんの美味しいご飯食べて、あったかいお風呂も頂いて。
 おまけにあたしのパジャマ(頻繁に泊まりに来るから、あたし専用の小さなタンスがあるの)も洗ってもらって。

 あたし、こんなに至れり尽くせりでいいのかしら。

 かちゃりと部屋のドアが開き、お風呂上がりでまだ髪の毛が半乾きの優衣がオレンジジュースを持ってやってきた。