『……今日、奥様とお稽古の予定ではございませんでしたか?』
「お母様には後で謝りの電話を入れておきますから」
『忘れずにお願いしますね。 奥様には私のほうからもお伝えします』
携帯をブレザーに突っ込み、頬を軽く叩き、テンションを上げる。
それにしても、寝てる姿も男前って、ずるくない?
男のくせに肌ツルツルで、きめ細かくてシミもない、なんてこいつの弱点って一体なんなの。
っていうか、寝るなら眼鏡取りなさいよ。
眼鏡を外そうと手をのばしてみたけど、別に見たことあるからいいか、とすんなり諦め、視線を奥へと送る。
鉛筆と紙が擦れる音が響く中、片肘をつきながらデスクを見つめるカイさん。
笑ってる顔も好きだけど、でも、ここから見える斜めで真剣な表情っていうのもなかなか素敵。
ちょうど、耕太の寝顔とカイさんの表情が比べることが出来るソファーの端へと移動する。
うーん……やっぱり、耕太の方がかっこいいのかなぁ。そんなに大差はないと思うけど。
……かっこいい人って、なんだか苦手分野なのよねぇ……。

