「あんたなんかと付き合ったあたしが馬鹿だったっていうことね」

 そう吐き捨てたあたし――七瀬梨海(ななせりみ)は、お世辞にもキレイとは言えない巻き髪を揺らしながら、目の前の男を睨み付けた。

 容姿はだいたい中の中、人によっては中の上だとか中の下とか言う人もいると思う。

 このくらいの容姿を持つ男なんてこの世の中にうようよといる。

 その彼を選んだのは、それなりに理由があったから。

 これで9回目だわ、とため息とともに吐き出した息は、冬の少し前、肌寒くなった空気に溶け込んだ。


 あたしがこの男と別れた理由は簡単。

 彼もまた、そこら辺にいる万年発情期の猿頭の男となんら変わりがなかったから。

 だって、聞いちゃったんだもの。

 彼はあたしと同じ高校――私立英明(えいめい)高等学校の二個年上の先輩。

 つまり、1年のあたしと3年の彼。

 中学生の頃から憧れだった先輩との恋なんて、あたしにとって日常茶飯事と化してしまった。

 高校に入学してから、何人かと付き合ってはみたものの、どれもワンクールも続かずダメになってしまう。

 良くて3ヶ月、悪くて1週間や2週間。

 そんな中、珍しく4ヶ月目に突入したのが、二個上の彼だったってわけ。