不器用なボク~先生と生徒の関係~

扉から現れたのは、もちろん僕達の担任の高橋寿美子先生だった。


160cmは無い(と思う)小柄な体型で、教壇の前に着くと足を止めた。


黒で統一された上下のスーツに大人の色気を感じる時もある。


黒いストレートのロングの髪は、頭が動くと一緒に踊る。


少し童顔な先生の顔だけを見ると、こちらの席に座ってても何の違和感はない。


ただ、先生に纏わりつく甘い香水の香りが大人の人なんだと僕に改めて認識させる。


先生が、こちら側の人間だったら、同じクラスメートだったら……


なんて、つまらなくてどうしようもない事を考えてしまった。


そのせいで、先生の事が見れなくなって、外へと視線を向けてしまう。


「来週からは最後の夏休みだけど、浮かれないで勉強を頑張ってね」


優しくて、少し高い声が教室の中を包んでいくように聴こえてきた。


その声に、僕は反応してしまい視線を教壇の方へと戻す。


周りのクラスメートからは、深い深い溜め息が零れるのと同時に、机の上に平伏すようになる生徒達。


最後の『夏休み』『勉強』って言葉に、テンションが落ち込んだのだろう。