悪い人じゃなさそうなのは見て感じた。

でもなんだか信用しきれなくて、車の中ではずっとケータイを握ってた。

念の為ね。
いちおー。

だってこんな風に男の人と会うのなんて初めてだったし。



はっきり言ってこれまでの人生でオトコノコと付き合ったこと無いんだよね。

カッコイイ男子もいなかったし。
かと言ってエンコーなんて怖いし、面倒なことになったらやだし。
出会い系もなんかイヤ。

ネットとかケータイサイトとかチャットとか、安上がりな方法なんていくらでもあったんだけどさ。


結局はあたしが小心者ってことだ。


「ねぇねぇ。」


あたしの声に運転席の男が耳を傾けた。

あ、横から見るとけっこういいかも。


「なに?」


「マフラーつけてもいい?」


「いいよ。君にあげたんだから。」


袋からごそごそ出した。
タグを探したけどもう取ってあるみたいだった。

案外・・・紳士じゃん。


「あったかー。」


あたしがマフラーに首を埋めると、心なしか平凡リーマンの顔が綻んだ気がした。




でも、気のせいかも。